抄録
我々はこれまでにグルタチオンによるレドックス状態の変化がヒャクニチソウの葉肉細胞から管状要素への分化系において必要であることを示した。グルタチオンによる細胞内レドックス制御の意義を植物体レベルでも調べるために、CaMV35Sプロモーター下流にデヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(DHAR)、または、葉緑体または細胞質型グルタチオンレダクターゼ(GR)をつないだコンストラクトを導入し、それぞれの遺伝子を高発現させることによって、グルタチオンのレドックス比を改変した形質転換シロイヌナズナを作出した。DHARはGSHを酸化し、GRはGSSGからGSHを再生する。作出した全ての形質転換シロイヌナズナは非形質転換体とくらべると根の形成が抑制されていた。これらは共焦点レーザー顕微鏡観察によって根のメリステム領域の細胞数減少によるものであることが示された。これらを考えあわせると、グルタチオンによるレドックス状態の変化が細胞の分裂速度を調節することによって根の伸長速度を制御していることが示唆された。さらに根のメリステム領域付近で起きている管状要素分化について解析中である。