抄録
植物におけるグルタチオンの生理機能とその制御機構を解明するために、我々は、これまでにシロイヌナズナ培養細胞においてグルタチオン結合タンパク質を同定した〔Ito et al.(2003) Plant Cell Physiol. 44: 655 〕。その一つが、葉緑体型フルクトース1,6―ビスリン酸アルドラーゼ(FBA)であり、その酵素には4つのシステイン残基が存在した。グルタチオンの結合するシステイン残基を特定し、その結合とFBA活性との関係を調べるために、4つのシステイン残基のうち1つをアラニンに置換した変異型FBAを4種類作製した。野生型及び3種の変異型FBAは、GSHにより活性が阻害されたのに対し、残り1つの変異型FBAの活性はGSHによって影響を受けなかった。このことから、特定のシステイン残基とGSHの結合によってFBA活性が制御されると考えられた。一方、GSSG存在下では、野生型、及び4つの変異型FBAともに、その活性は阻害を受けなかった。このことから、グルタチオンによるFBAの活性制御はFBA分子内に存在するシステイン残基の単純なレドックス制御ではないと考えられる。現在、さらに詳細な解析を行っている。