抄録
我々はロゼット植物トルコギキョウにおいて春化が還元型グルタチオン(GSH)合成を活性化し、合成されたGSHが抽だいを誘導することを示してきた。そこで今回は、抽だいの誘導がGSHに特異的かどうかを調べた。春化を与えない植物にGSHを処理したところ抽だい率が上昇したが、酸化型グルタチオンではそのような効果は得られなかった。GSHの前駆体のシステインはGSH同様に抽だいを促進した。しかし、ジチオスレトール(DTT)や2-メルカプトエタノールはどちらも抽だいを誘導しなかった。春化による抽だい促進効果はGSH合成阻害剤のブチオニンスルフォキシミン(BSO)処理により打ち消され、GSHをBSOと同時に処理することで抽だい率は回復した。しかし、DTTやシステインによる回復は認められなかった。したがってBSOの効果はGSH以外のチオールでは打ち消すことが出来ず、GSHによってのみ打ち消すことができた。以上より、春化誘導性の抽だいはGSHによって特異的に制御されていると示唆される。
