抄録
高等植物におけるZ,E混合型長鎖ポリイソプレノイドは、炭素数50-60、75-120(天然ゴムに至っては105以上)と、同一個体中に多様な分布で豊富に存在していることが知られているが、これらの生理的意義については不明な点が多い。また、Z,E混合型長鎖ポリイソプレノイドの生合成を触媒するシス型プレニル鎖延長酵素(CPT)の生成物鎖長制御機構についても未だに解明されていない。本研究ではシロイヌナズナよりCPT遺伝子を単離し機能解析することで、CPTの反応制御機構とその生成物の生理的意義を解析する事を目的としている。
既に報告されている一種類のCPT遺伝子を含め、シロイヌナズナのゲノム配列上には9種類のCPTの相同遺伝子が存在する。RT-PCRにより各組織における発現パターンを解析した結果、7種類の遺伝子の発現が確認でき、それらのcDNAを単離することができた。これらを出芽酵母のCPT遺伝子の一つであるRER2の変異株で発現させたところ、温度感受性の表現型を相補した。また、これら形質転換酵母の粗酵素抽出液を用いたアッセイの結果、in vitroにおいて実際にプレニル鎖延長酵素活性を示すことが明らかになった。各々の反応の生成物を解析した結果、各タンパク質の一次配列間の比較的高い相同性にもかかわらず、最終産物であるプレニル二リン酸の炭素鎖長はC50からC100まで非常にバラエティに富んでいた。