日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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Schizochytrium limacinum SR21株のDHA生成に関する細胞学的解析
*森田 詠子鍵和田 聡中原 東郎野口 哲子
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p. 511

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抄録
ラビリンチュラ類は、クロミスタ界に属する、遊走子世代を持つ菌類様原生生物である。植物のセルロース等の陸源有機物を分解するため、沿岸生態系において重要な役割を果たしている。近年、高度不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸(DHA)を細胞内に蓄積することから注目されている。ラビリンチュラ類の脂肪酸組成やDHAの生合成経路に関する生化学的、分子生物学的データはあるが、DHA生成過程の細胞学的研究は皆無であった。SR21株はとりわけ高いDHA生産性で知られ、脂質含有量は細胞乾燥重量の50%にのぼり、その40%がDHAであることが報告されている。我々はSR21株を用いて、ナイル・レッド染色により蛍光顕微鏡下で脂質滴を観察し、遊走子が着床し栄養細胞として生長する過程で、細胞が脂質を急速に蓄積することを観察した。急速凍結置換法で作製した電子顕微鏡試料では、DHAを2位に、パルミチン酸を1、3位に持つトリアシルグリセロールは、特有の縞模様を呈する脂質滴を形成すると考えられている。そこで、遊走子と栄養細胞を電子顕微鏡法で観察した結果、栄養細胞でDHAと特定できる特有な油滴が多かった。さらに、細胞の脂肪酸含量、組成を解析した結果、脂肪酸含量は遊走子では少なかったが、栄養細胞では増加した。一方、DHAの脂肪酸に占める割合は遊走子で栄養細胞より高かった。
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© 2004 日本植物生理学会
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