日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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シロイヌナズナの低温でのPC合成における2つのCDP-コリン生合成活性化機構
*稲継 理恵中村 正展西田 生郎
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p. 512

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抄録
シロイヌナズナのホスファチジルコリン(PC)合成は,CDP-コリン経路の鍵酵素CDP-コリン合成酵素をコードする2つのイソ遺伝子(AtCCT1およびAtCCT2)の支配をうける.我々はこれまでに,低温におけるPC増加にはAtCCT2の発現増大が関与することを明らかにした.しかし予想に反して,AtCCT2のT-DNA挿入破壊株cct2株においても低温でのPC含量が野生株と同じく増加することを前回報告した.今回,cct2株では,AtCCT1が低温で発現レベルを変化させることなくCCT活性増加に貢献することを見出したので報告する.
cct2株のロゼット葉破砕液を遠心分画し,各画分に含まれるAtCCT1タンパク質レベルとCCT活性を比較した.その結果,150 k x g膜画分では,低温処理によってAtCCT1タンパク質の量はほとんど変化しないにも関わらず,CCT活性が増加することを明らかにした.この結果は,シロイヌナズナの低温でのPC合成は,AtCCT2の発現増強と,AtCCT1タンパク質の活性調節という2つの異なる仕組みによって支配されることを示唆する.AtCCT1およびAtCCT2の両遺伝子の二重破壊株は,長期間の低温で生育の遅延を示し,野生株と同レベルのPC含量を維持できなかった.これらの結果は,シロイヌナズナの長期の低温環境への馴化には,少なくとも一方のCCTイソ遺伝子のはたらきによるPCレベルの維持が必要であることを示している.
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© 2004 日本植物生理学会
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