抄録
ナデシコ科、ザクロソウ科を除くナデシコ目植物では、アントシアニンが存在せず、その赤色はベタシアニンにより発色されている。我々は、なぜナデシコ目植物にはアントシアニンが存在しないのかという問題に対し、フラボノイド合成系においてアントシアニン合成のLate stepを触媒する酵素に注目し、分子レベルでの解析を試みている。これまで我々はナデシコ目植物のホウレンソウ、ヨウシュヤマゴボウの2種から、DFR (dihydroflavonol 4-reductase) のcDNAを単離した。これらのDFR cDNAは、約40 kDa の蛋白質をコードしており、アントシアニンを合成する植物のDFRと62-82%の相同性がみられた。さらに、これらにはDFRに特徴的な NADPH結合領域も保存されていた。大腸菌で発現させたrecombinant DFRは、dihydroquercetinを還元し、leucocyanidinに変換した。このことより、ホウレンソウ及びヨウシュヤマゴボウでは、機能を保持したDFRが存在、発現していることが明らかになった。