日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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PAP1 遺伝子過剰発現体を用いた網羅的解析によるアントシアニン蓄積機構の解明 (1) ―トランスクリプトミクスとメタボロミクスの統合―
*峠 隆之平井 優美矢野 美弦中嶋 淳一郎井上 恵理高橋 秀樹Goodenowe Dayan野路 征昭山崎 真巳斉藤 和季
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p. 518

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抄録
PAP1 はフラボノイド生合成系遺伝子の発現誘導に関わるMyb様転写因子をコードするシロイヌナズナの遺伝子である。本研究では、詳細なフラボノイド蓄積機構の解明のために、PAP1 遺伝子が過剰発現したアントシアニン高蓄積変異株 (pap1-D) について、蓄積代謝物の網羅的解析(メタボロミクス)および遺伝子発現の網羅的解析(トランスクリプトミクス)を行い、PAP1遺伝子制御下の蓄積に至るまでの代謝系間ネットワークを詳細に解析した。
 シロイヌナズナの野生型株、pap1-D 変異株および PAP1 遺伝子cDNA過剰発現形質転換体のロゼット葉および根を用いて、HPLC-PDA-MSおよびFT-MSによる代謝物の網羅的解析を行った。その結果、PAP1 過剰発現体群において、葉では11種類、根では6種類のcyanidin誘導体が高蓄積していることが確認された。また、アフィメトリックスDNAチップによる約23,000遺伝子のトランスクリプトーム解析を行った結果、PAP1 過剰発現体群では、フラボノイド生合成の酵素遺伝子の他、アントシアニン蓄積に関与すると考えられる特定遺伝子群の発現誘導が認められた。以上の結果から、PAP1 遺伝子はアントシアニン蓄積を特異的に制御する転写因子であることが示された。また、アントシニン蓄積に関与すると考えられる修飾転移酵素遺伝子、輸送系遺伝子や転写因子についての情報を得ることができた。
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© 2004 日本植物生理学会
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