抄録
富栄養化した湖沼において大繁殖するアオコの生育を支配する環境因子について、これまで光強度、明暗周期、温度などが検討されてきた。また主要な培地成分である窒素およびリンなどが生育に及ぼす影響についても報告がなされている。しかし、アオコの生育に対するナトリウムやカリウムイオンの影響についてはほとんど検討がなされていない。そこで、本研究においては生育に及ぼすカリウムイオンの影響について調べた。ミクロシスティスNIES102細胞をKCl濃度0-40mMの培地で培養したところ、0, 0.5, 1, 2.5mM KClにおける平均世代時間は各々22, 27, 23, 32時間であり、5-40mM KClの場合にはほとんど生育が観察されなかった。また、10mM NaClと5mM K<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>の培地で培養したところ、前者においては通常の培地とほぼ同じ生育を示したのに対して、後者においてはまったく生育しなかった。そこで光合成活性に対するカリウムイオンの影響を0 mM KClと40 mM KClの培地で測定したところ、光合成における見かけ上のKm(NaHCO<sub>3</sub>)値は各々56, 279μMとなり、最大活性は各々129, 133μmoles O<sub>2</sub>・mg Chl<sub>-1</sub>・h<sub>-1</sub>となった。以上のことから、ミクロシスティスNIES102細胞におけるKClの生育の抑制効果は、カリウムイオンが本株の光合成を阻害するためであることが示された。