抄録
緑藻クラミドモナスは、CO2欠乏条件下で複数の遺伝子を発現し、能動的に無機炭素を取り込む無機炭素濃縮機構を誘導する。この誘導に関わるCO2シグナル伝達機構を明らかにするため、我々は低CO2誘導性を示す炭酸脱水酵素遺伝子Cah1のプロモーターとレポーター遺伝子Arsを用いて、遺伝子タギング法により、低CO2条件でのCah1遺伝子の誘導に欠陥をもつ変異株C44を単離している。C44株では、低CO2条件でCah1の誘導が正常に起こらず、宿主株に比べて生育速度の低下ならびに無機炭素に対する親和性の減少が認められた。
C44株ではタグの挿入が1箇所で、その挿入と変異表現型は連鎖していた。タグ近傍の配列を解析し、相補実験によって変異原因遺伝子LciR1を同定した。LCIR1はアミノ末端側にMyb-like DNA結合ドメインを一つ持ち、低CO2誘導性遺伝子であるCah1とLci1の発現を調節していた。LciR1自身の発現も低CO2条件で誘導され、無機炭素濃縮機構を制御するCcm1遺伝子によって調節を受けていた。LCIR1タンパク質のDNA結合特異性については現在検討中である。