日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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光合成系温度馴化の分子メカニズムの解析
*矢守 航朝倉 由香里中井 正人寺島 一郎
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p. 533

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抄録
植物の光合成能力は栽培温度に馴化し、低温で栽培すると光合成の最適温度が低温側にシフトする。Farquharらは、光合成の最適温度のシフトは2つの光合成部分反応、RuBPカルボキシレーション反応とRuBP再生反応とのバランスの変化により生じると提唱した。また、最近の研究によって、栽培温度は後者の温度依存性そのものにも影響を与えることが示された。本研究では、光合成系の温度馴化における分子メカニズムを明らかにするため、光合成の様々な性質を15℃と30℃で栽培したホウレンソウ葉について比較した。
CO2濃度360μL L-1、光飽和下における光合成速度を解析したところ、個葉の光合成最適温度は15℃葉で18℃、30℃葉では27℃だった。また、RuBP再生反応の最適温度は15℃葉で30℃、30℃葉では36℃だった。そして、栽培条件によってそれほど変化しないと考えられてきたカルボキシレーション反応の温度依存性にも大きな違いが見られ、15℃葉の最適温度は18℃、30℃葉では24℃だった。
二次元電気泳動解析の結果、栽培温度の違いにより、Rubisco small subunitの泳動像に違いがあった。これらの結果から、低温に移したホウレンソウ葉では、低温側で効率よく働くRubiscoの発現、もしくは、Rubiscoの翻訳後の修飾などが関与して、光合成の最適温度を低温側にシフトさせるという可能性が考えられる。
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© 2004 日本植物生理学会
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