抄録
維管束分化の空間的制御機構を解明するため,我々はシロイヌナズナから葉脈パターンに異常のあるvan3突然変異体の解析を進めている。VAN3遺伝子はArfGAPモチーフを持つタンパク質をコードしており、エンドソーム様の膜上で複合体を作って機能することが示唆されたため、本研究ではVAN3活性を制御しうる因子の探索を行った。酵母Two Hybrid Systemを用いたドメイン解析から、VAN3タンパク質のBARドメインはホモダイマー形成に必要十分であることが示された。さらに、酵母Two Hybrid Systemを用いたVAN3結合タンパク質の探索を行った結果、GTPaseドメインを有するADL1A dynaminが単離された。ADL1Aは魚雷型胚において維管束で特徴的な発現が観察された。ADL1A::ADL1A-GFP形質転換体を用いた細胞内局在の結果、ADL1Aタンパク質はエンドソーム様構造上にも局在することが明らかとなった。adl1a突然変異体はトライコームや柱頭毛形成、さらには維管束の連続性に異常を示した。また、adl1a, adl1e二重突然変異体は前形成層形成不全を起こし、胚性致死を示すこと等から、ADL1Aは単細胞が特殊化した細胞へと分化する課程で共通して機能し、その一部はVAN3による活性制御をうける可能性があることが示唆された。