抄録
原核生物のゲノムDNAは、核様体と呼ばれるDNA-タンパク質複合体を形成している。この核様体タンパク質はAnabaena sp. PCC 7120ではHUとDpsがある。AnabaenaのHUをコードする遺伝子はhanAのみであり、ホモダイマーを形成すると考えられている。Dpsをコードする遺伝子は4個(all0458、all1173、alr3808、all4145)ある。系統解析を行ったところ、all3808はSynechococcus sp. PCC 7942のdpsAと、all1173は大腸菌のdpsと同じグループに分けられ、Anabaena variabilis M3から低温誘導性遺伝子として単離されたlti46遺伝子と同一であるall0458はall4145と共に第3のグループに分けられた。Anabaenaの野生株の増殖に伴うhanAとdpsの発現量の変化を調べたところ、hanAとalr3808とall4145のmRNAは対数増殖期で主に蓄積し、Dpsをコードする遺伝子のうち定常期特異的に蓄積するものはなかった。また、低温、暗所、窒素欠乏、鉄欠乏状態下での野生株におけるそれぞれの遺伝子の発現量の変化も調べた。その結果、4個のdps遺伝子がそれぞれ異なる発現の特徴を示した。同様に、それらの遺伝子の破壊株における発現についても報告する。