日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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nahG形質転換植物を用いたイネの防御応答メカニズムの解析
*楠見 健介廣川 大志郎八丈野 孝射場 厚
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p. 564

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抄録
サリチル酸(SA)は、高等植物の抵抗性反応において必須の物質であり、病原菌などの感染にともないその蓄積量が上昇する。しかし、これらはタバコやシロイヌナズナなどの双子葉植物で見られる現象であり、単子葉植物であるイネでは、SA含量は非感染状態においても常に高いレベルに保たれており、病原菌が感染してもほとんど変化しない。このことは、イネにおけるSAの働きが双子葉植物と異なる可能性を示唆している。本研究では、イネにおけるSAの働きを調べるため、バクテリア由来のSA分解酵素salycylate hidroxylase 遺伝子(nahG)を導入した形質転換イネの解析を行った。nahG形質転換イネにおいてはSA含量が野生株の20~25%程度まで抑制され、幼苗期の成長について、4~5日の遅延が見られた。また、非感染状態においても高照度下で葉に病斑(疑似病斑)が形成された。これらのnahG形質転換イネでは活性酸素の除去に関与するグルタチオンのプールサイズが減少しており、酸化還元状態の顕著な変化が観察された。これらの結果は、イネにおいてSAが抵抗性反応以外に活性酸素除去系メカニズムの維持に機能していることを示唆する。
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© 2004 日本植物生理学会
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