抄録
マメ科植物と根粒菌の共生成立には多段階の相互認証が必要であり、認証は根粒菌の宿主皮層細胞侵入時にも為されるとされている。侵入時の宿主側防御応答の回避に関わる遺伝子として、無限型根粒を形成するアルファルファの根粒菌では、バクテロイド化不全を示す変異株から複数回膜貫通タンパク質をコードするbacAが見出されている。bacAホモローグは動物病原菌Brucellaにも存在し宿主細胞内での生存に関わることが示されているが、アルファルファ菌以外の根粒菌では未解析である。我々は有限型根粒を形成するミヤコグサの根粒菌のbacAホモローグ(mlr7400)と周辺遺伝子について調べた。
Mesorhizobium loti MAFF303099株のmlr7400近傍領域を含むコスミドクローンにKAN2ミニトランスポゾン挿入を行い、派生物を用いた相同組換えによりゲノム上のmlr7400と近傍の5ORFへのKAN2挿入株を得た。ミヤコグサとの共生能を検定した結果、mlr7400への挿入株では、野生株に比べて根粒数の増加と窒素固定能の低下は認められたが、アルファルファ菌bacA変異株の様な窒素固定不能株では無く、エタノールやSDSに対する耐性低下も顕著ではなかった。興味深いことに、mlr7400下流のmll7402へのKAN2挿入株も、mlr7400挿入株と同様の形質を示した。KAN2挿入が産物機能の完全破壊に至っていない可能性を考慮し、2つのORFの蛋白質コード領域を欠失する株を作製した結果、いずれも挿入株と同様の共生形質を示した。