抄録
カリウムチャンネルは植物の成長の様々な側面において重要な働きをしていることが知られているが、細胞周期の進行におけるその役割は知られていなかった。そこで、タバコBY-2 細胞の細胞周期同調系を使って細胞周期の進行におけるカリウムチャンネルの関与を調べたところ、カリウムチャンネルを通じたカリウムイオンの吸収が細胞周期のG1期からS期への正常な進行に必要なことがわかった。次に、この過程に関与するカリウムチャンネル遺伝子の探索を目的として、4つのShaker型カリウムチャンネル遺伝子をBY-2細胞から単離した。発現解析の結果、内向きチャンネルの一つをコードするNKT1遺伝子がG1期で発現することがわかった。NKT1遺伝子のアンチセンス株を作製したところ、NKT1遺伝子の発現量が低下するとカリウムイオンの吸収量が減り、細胞周期の進行が遅れることがわかった。これらの結果からShaker型内向きチャンネルの一つ、NKT1遺伝子産物が細胞周期の正常な進行に関与している可能性が示唆された。