抄録
アルミニウムの活性酸素応答性Ca2+チャネルへの影響を明らかにすることを目的として、オワンクラゲ由来のCa2+感受性発光タンパク質エクオリンを発現したBY-2タバコ細胞を用いて実験を行った。BY-2細胞において低濃度のアルミニウム処理が細胞外でのO2-の生成を誘導し、次いでO2-が活性酸素応答性のCa2+チャネルを活性化し、[Ca2+]c上昇を誘導することを明らかにした。一方、活性酸素応答性のCa2+チャネルは、高濃度のアルミニウム存在下では、活性を完全に阻害され、O2-や過酸化水素などの活性酸素種が存在しても[Ca2+]c上昇が起きないことが明らかになった。これは、低浸透圧ショックにより誘導される[Ca2+]c上昇など、活性酸素応答性ではない[Ca2+]c上昇に関与するCa2+チャネルとは挙動の大きく異なる点である。これまで活性酸素応答性のCa2+チャネルに特異的な阻害剤は報告されていなかったが、アルミニウムと希土類イオンを使い分けることにより、今後サリチル酸情報伝達経路やエリシター情報伝達経路における活性酸素応答性と非応答性のCa2+チャネルの異なる役割を解析することが可能になる。