抄録
植物はそのゲノム中に多数のABCタンパク質遺伝子を有しており、シロイヌナズナではデータベース上に約130種のABCタンパク質遺伝子が見出されている。最近の研究から、これらのメンバーが植物の重要な生理機能に複雑に関わっていることが解明されつつある。本研究では、植物のABCタンパク質の中でも、特に機能解明の遅れているPGP(P-glycoprotein-like)サブファミリーのAtPGP4に焦点を絞り、同サブファミリー内の相同遺伝子と比較しつつ、その機能解析を行った。まず、AtPGP4の発現様式及びその発現の環境応答性を明らかにするため、組織特異的Northern解析とRT-PCRによる解析を行った。その結果、植物体各組織においてAtpgp4の発現を認め、特に根における強い発現を確認した。またAtpgp4プロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結したコンストラクトを用いて解析を行ったところ、同様に根における強い発現を認めた。また、地上部では葉の鋸歯の先端及び莢の基部のみに特異的な発現を認めた。一方、seedlingに様々な化合物を添加し応答を調べた結果、同サブファミリー内の他の分子種と比較して、Atpgp4はサイトカイニンに対する強い応答を示すことが認められた。現在、AtPGP4過剰発現体を作製し、T-DNA挿入変異株と比較しつつ機能解析を進めている。