日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ラン藻Synechocystis sp. PCC6803のsll1848欠損株の生理的性質の解析
*辻 紀子佐藤 典裕児玉 遊都筑 幹夫
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p. 604

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抄録
1-acylglycerol-3-phosphate acyltransferase (LPAAT)はグリセロ脂質合成の初期に働くacyltransferaseであり、 lyso-phosphatidic acid (LPA)からphatidic acid (PA )を合成する反応に関与している。ラン藻 Synechocystis sp. PCC6803のsll1848E.coliのLPAATをコードするplsC遺伝子のホモログである。そこで、PCC6803でsll1848を破壊した株を作製し、その性質を調べた。その結果、sll1848破壊株は野生株に比べて脂質の種類に関係なく、炭素数16の脂肪酸の割合が減少し、炭素数18の脂肪酸の割合が増加していた。この結果からSynechocystis sp. PCC6803のsll1848が脂肪酸の炭素鎖の長さの決定に関与していることが明らかとなった。一般にグリセロール骨格のsn-2位へのアシル基転移をLPAATが触媒すること、PCC6803ではsn-2位が主に炭素数16の脂肪酸であることなどを考慮すると、sll1848にコードされるタンパク質がLPAATの機能を持つ可能性が高まった。また、少なくとも破壊株ではsn-2位へのアシル基転移に他の遺伝子も関与していると考えられた。sll1848破壊株は野生株に比べて増殖が遅く、低温に対する感受性が高まっていた。
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© 2004 日本植物生理学会
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