抄録
【目的】 OASA1D遺伝子は、イネ由来のアントラニル酸合成酵素 (AS) 遺伝子を、トリプトファン (Trp) からのフィードバック阻害に非感受性に改変したものである。バレイショにこの遺伝子を導入するとTrp含量が上昇する。本研究ではOASA1Dの導入がバレイショの代謝生理に起こす変化を明らかにすることを目的に、AS活性、代謝プロファイリング、IAA含量について検討を加えた。
【方法と結果】 野生株およびOASA1D導入バレイショの葉と塊茎から粗酵素液を調製し、AS活性を測定した。野生株に比べ、OASA1D導入バレイショのAS活性量は変化しなかったが、Trpからのフィードバック阻害に対して有意に非感受性に変化していた。また、葉および塊茎抽出物を逆相系HPLC(グラディエント溶出、検出:UV 280nm)で分析し、代謝物プロファイルを比較しても、OASA1Dの導入によるTrp以外の成分の顕著な変動を見いだすことはできなかった。組織中遊離IAA含量の定量はLC/MS/MSを用いて行った。その結果、遊離IAA含量はバレイショ茎頂部で数倍程度増加していることが明らかになった。