抄録
我々は花茎重力屈性の分子機構を理解するため、シロイヌナズナの重力屈性変異体の解析を進めている。これまでの研究から、花茎内皮細胞層が重力感受細胞であり、この細胞に含まれるアミロプラストと呼ばれる色素体が重力方向に沈降することが花茎重力屈性に重要であることが示されている。花茎の重力屈性能が低下した劣性変異体 sgr6 (shoot gravitropism 6)は正常なアミロプラストの沈降を示し、光屈性も正常である。Map-based cloningを行ったところ、SGR6は1703アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた。しかし、その中に機能を予測できる既知のドメインはほとんど見出せなかった。次に内皮細胞特異的なSCRプロモーターを用いてsgr6-1変異体内でSGR6 cDNAを発現させたところ、重力屈性能の回復が見られた。これらのことは未知の機能を持つ新規タンパク質SGR6が、内皮細胞内における重力感受あるいはその後比較的早く起こるシグナル伝達に関与する可能性を示唆している。現在、この新規タンパク質の機能解析を進めている。