抄録
マメ科植物のムクナ(Mucuna pruriens L.)は、他植物の根の生長を著しく抑制する強いアレロパシー活性を有することが、実験的な研究により検証されている。我々は、現在の地球環境に存在しない環境を人工に創り出した場合には、その環境内で生育される生物の挙動の他、生命活動に関連する化学種の生成や伝達・消滅の過程は、地上でのそれらとは異なる部分があると予想している。ムクナの強いアレロパシー活性は根から滲出されるL-DOPAが主たる要因であると推定されているが、L-DOPAは酸化すると速やかに重合しメラニン色素が生じるため、組織内に色素沈着が確認される。これまでに、3D-クリノスタットを用いた疑似微小重力下と地上とでは、異なるアレロパシー活性が認められることを示してきた。そこで、現在、ムクナを材料としてL-DOPAを中心としたアレロパシー物質の産生、放出、輸送、感受の一連の過程のどれが重力に依存するのかを体系的に検索している。今回、地上対称と疑似微小重力環境におけるムクナの根について、組織学的および組織化学的な検討を詳細に行った。現在までの結果から、疑似微小重力環境におけるアレロパシー活性の低下に根の先端が重要な役割を演じている可能性が示唆された。