日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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イネのニコチアナミン合成酵素遺伝子(OsNAS1, OsNAS2, OsNAS3)は長距離輸送に関与する細胞で発現する
*井上 晴彦樋口 恭子高橋 美智子中西 啓仁森 敏西澤 直子
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p. 622

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抄録
ニコチアナミン(NA)は全ての高等植物に存在し、金属イオンと安定な錯体を形成するキレート物質である。イネ科植物においては、NAはムギネ酸生合成の前駆体として重要な役割を果たしている。
イネの三種のニコチアナミン合成酵素遺伝子(OsNAS1OsNAS2OsNAS3)は、すべてが鉄の長距離輸送に関与する細胞で発現していた。またその鉄栄養による発現の制御は分子種によって異なっていた。
ノーザン解析の結果、OsNAS1OsNAS2は、鉄十分の根において弱く発現し、鉄十分の地上部では発現していなかった。一方、鉄欠乏では、地上部、根ともに発現が著しく増大した。OsNAS3は鉄十分の地上部、根で弱く発現していた。鉄欠乏によって、OsNAS3は地上部で発現が抑制され、根では誘導された。
さらにプロモーターGUS実験によって、三種のOsNASの組織局在を解析した。OsNAS1OsNAS2の発現部位は共によく似ており、鉄十分の根の師部伴細胞、原生導管に隣接する内鞘細胞で発現していた。鉄欠乏では、発現は根の全体であった。OsNAS3は、鉄十分の地上部の伴細胞、根の伴細胞と内鞘細胞で観察された。鉄欠乏により地上部の発現は抑制され、根では若干誘導された。これらの結果は、イネのNAS遺伝子が、鉄欠乏に応答するムギネ酸の分泌に機能するだけでなく、鉄の長距離輸送にも関与することを支持している。
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© 2004 日本植物生理学会
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