抄録
ラン色細菌の酸性ストレスに対する応答機構を解明する目的でSynechocystis sp. PCC 6803をpH 3.0とpH 8.0の培地で30分~4時間培養した細胞からRNAを精製し、DNAマイクロアレイを用いて両者の遺伝子発現の違いを網羅的に比較した。その結果、酸性ストレス特異的に発現が誘導される遺伝子を30個見出した。その中で酸性ストレスで発現が4時間まで増加し続ける遺伝子、slr0967、sll0939の遺伝子破壊株を作成し、作成した欠損株と野生株をpH 3のGly-HClを含んだ酸性BG-11プレート上にまき生存限界を調べた結果を以前報告した。しかし、この条件では酸性条件が厳しくpHの変動も大きかったので、今回はpHをより安定に保つことができるより温和な酸性条件として、pH 5.5~pH 6のMES-NaOHで緩衝させたBG-11プレートを用いて調べた。 pH 5.5とpH 6で一週間培養した結果、これら遺伝子破壊株は野生株に比べ明らかに増殖が抑えられ死滅した。この2つの遺伝子欠損株に加え、酸性ストレス応答遺伝子の欠損株をさらに7株作成し同様な実験をした結果、その内3株は酸性ストレス処理により増殖が抑えられたが、他の4株は影響を受けなかった。さらに、これらの遺伝子破壊株の光合成特性や他ストレスでの発現量などを比較し、得られた特徴について合わせて報告する予定である。