抄録
我々は、高等植物における紫外線応答機構の解明を目指し、イオンビームを変異原として紫外線感受性変異株の単離と解析を行ってきた。これまでに、誤りがち損傷乗り越え複製機構の欠損したsuv1 (rev3-1) 変異株 (Sakamoto et al., 2003)や、ヌクレオチド除去修復機構の欠損したsuv3変異株 (Vo et al., unpublished) の単離に成功した。今回は、UVB、ガンマ線及びマイトマイシンCに対して感受性を示すsuv2変異株について報告する。マッピングの結果、suv2変異は第5染色体の下腕部と強くリンクしていることがわかった。そこで、この位置に該当するP1クローンを用いてサザンブロットを行い、さらにTAIL-PCRで解析を行った結果、suv2ではDNA断片の重複と挿入を含む大きな構造変化が起きていることが明らかになった。DNA断片の挿入によって1つの遺伝子(MRA19.1)が破壊されており、これがsuv2変異の原因遺伝子と予想されたが、既知のDNA修復酵素とは全くホモロジーがみられなかった。一方で、T-DNAの挿入によりMRA19.1が破壊されたラインでも、suv2と同様に紫外線感受性がみられた。以上の結果から、MRA19.1は損傷修復又は損傷トレランスに関わる新しい遺伝子であることが示唆された。