抄録
高等植物の各オルガネラに局在するアスコルビン酸ペルオキシダーゼ (APX) アイソザイムは、個々に発現調節を受け、活性酸素の消去および細胞内酸化還元レベルの調節に機能している。細胞質型APX(cAPX)は強光ストレスに対して特異的に誘導されることが明らかになっている。そこで今回、cAPX発現調節機構を明らかにするためにプロモーターの解析を行った。ホウレンソウcAPXプロモーター領域を5'側より欠失させGUS遺伝子と連結した融合遺伝子をアラビドプシスに導入し、強光応答に関与するシスエレメントの同定を試みた。その結果、強光照射(1,600 μE/m2/s)により-1753 bpもしくは-1325 bpのcAPXプロモーターを導入した植物体では、正常条件下(100 μE/m2/s)でのGUS活性と比べ約2.4、2.5倍の増加が認められた。一方、-860~-139 bpを導入した植物体では顕著な誘導は認められなかった。そこで、-1325~-860 bpの領域を-139 bpの最小プロモーターの上流に連結した融合遺伝子をアラビドプシスへ導入した。その結果、形質転換植物体では正常条件に比べ強光条件下で約2.5倍高いGUS活性を示した。このことからcAPXの強光応答に関与するシスエレメントは-1325~-860 bpの領域に存在することが明らかとなった。