抄録
環境ストレス応答の初期段階で生成する活性酸素種は、レドックスシグナル分子として作用しさまざまな環境応答機構の発現を引き起こす。我々はこれまで、細胞質型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(cAPX)の形質転換により、植物細胞内レドックス状態の改変が可能なことから、レドックスによる応答機構解析の良いモデル実験系となることを示してきた。今回、cAPXを発現抑制および過剰発現させた植物培養細胞(タバコBY-2細胞、シロイヌナズナT87細胞)を用い、細胞内レドックス状態と環境ストレス応答性の関連について検討を行った。cAPX発現抑制により細胞内酸化レベルが増大したBY-2細胞は、37℃の熱ストレス、400 mM NaClによる塩ストレス、100 mM H 2 O 2 による酸化ストレスに対して耐性能の増加が認められた。cAPX抑制細胞では定常条件下において、HSPなどの熱ストレス耐性関連遺伝子群およびNDPK、NPK-1などストレスシグナル伝達関連遺伝子の発現量に増加が認められることから、ストレス耐性能の増加には遺伝子発現レベルで関与することが示唆された。一方、cAPXを過剰発現させたT87細胞は、熱ストレスに対して感受性を示した。細胞内レドックス状態とストレス応答性には密接な関連性のあることが示唆された。現在、ストレス応答に関与する他のレドックス応答遺伝子の探索も試みている。