抄録
私たちは、遺伝子組換えにより重金属高蓄積性植物を作出し、これを植物を利用した環境浄化(phytoremediation)へ応用することを目指している。ここでは、重金属ストレスに対して高い耐性を示す海産性緑藻(Chlamydomonas sp.W80)由来カドミウム耐性遺伝子(Cd404)のシロイヌナズナへの導入を報告する。Cd404は、Chlamydomonas sp.W80のcDNAを含むベクターで大腸菌を形質転換した中からカドミウム抵抗性を指標にして単離された。263個のアミノ酸からなる分子量29kDaのタンパク質をコードし、HisやAsp等の荷電アミノ酸の連なった特徴的な領域を持つ。35Sプロモーターで制御したCd404遺伝子をシロイヌナズナに導入し、Cd404遺伝子発現個体を得た。これらの系統(T2)をカドミウム100~200μMを含むMS培地で生育させたところ、野生株に比べて明らかに強い耐性を示した。さらに、ホモ系統(T3)を選抜し、200μMのMS培地で30日間生育させたものについてカドミウム含有率と蓄積量を調べたところ、野生株に比べて3倍以上のカドミウム蓄積量を示す系統も見られた。これらの結果を踏まえて、遺伝子組換え植物を用いたphytoremediationの可能性について言及する。