抄録
マメ科植物と根粒菌との共生成立において、根毛における根粒菌の感染・侵入には硝酸態窒素が阻害的に働く。根粒形成初期過程における硝酸阻害を解析するために1,9000のnon-redundantなミヤコグサESTクローンをスポットしたアレイを用いて、根毛における硝酸応答遺伝子を解析した。硝酸処理4日後の根毛において、窒素同化関連遺伝子の他に、HPP domain containing protein、MYB-type transcription factor、LRR protein をコードする硝酸誘導遺伝子を同定した。興味深いことに、ジャスモン酸誘導遺伝子として知られる12-oxo-phytodienoic acid reductase、 glutathione S-transferase、 UDP-glucosyltransferaseをコードする遺伝子は発現抑制されていた。窒素制限条件下での根粒菌感染時にジャスモン酸を与えると、感染糸形成は顕著に向上した。これらの結果から、根毛における根粒菌形成過程には、硝酸による内生ジャスモン酸量の低下によって引き起こされる、サリチル酸による病原防御応答が関わっていることが示唆された。