抄録
同花被花が多い単子葉植物では、花の形態の遺伝的機構を説明するモデルとしてABC modelの代わりにmodified ABC modelが提唱されている。このモデルによれば、Bクラス遺伝子がwhorl2と3だけでなく、whorl1まで発現することによって、whorl1が花弁様の花被片を形成すると考えられている。近年、チューリップ等のユリ科植物で、Bクラス遺伝子の発現パターンがmodified ABC modelを支持する結果が報告されている。しかし、単子葉植物においてガクと花弁が分化した異花被花を用いた研究はこれまで行われておらず、異花被花の形態とBクラス遺伝子の関連は明らかになっていない。
そこで本研究では、単子葉植物のBクラス遺伝子と花被の分化の関連を解明するために、単子葉の異花被花植物であるムラサキツユクサ(Tradescantia reflexa)とツユクサ(Commelina communis)を用いて、Bクラス遺伝子の単離及び花における発現解析を行った。これらの植物からは5つの相同遺伝子が単離され、RT-PCRによる発現解析の結果、GLO-like遺伝子はすべてのwhorlで発現が見られるのに対し、DEF-like遺伝子の発現はwhorl2、3でしか見られなかった。この結果から、これらの植物においてDEF-like遺伝子の発現領域の変化が花被の分化を決定している可能性が示唆された。