抄録
植物の体は頂端分裂細胞から形成されるが、その形成維持機構の分子メカニズムの全貌はまだ知られていない。セン類ヒメツリガネゴケの配偶体は原糸体頂端分裂細胞、茎葉体頂端分裂細胞によって形成される。我々は頂端分裂細胞の形成・維持機構を明らかにする目的で、遺伝子トラップ系を用いて頂端分裂細胞特異的に発現する遺伝子を同定している。今回は、原糸体および茎葉体頂端細胞にレポーター遺伝子が発現するエンハンサートラップ系統ET21から単離されたet21遺伝子及びシロイヌナズナオーソログAtet21遺伝子について報告する。et21及びAtet21遺伝子はそれぞれ145、127アミノ酸からなる、新奇なタンパク質をコードする。ヒメツリガネゴケet21遺伝子末端に、GFP遺伝子を相同組換えにより挿入しGFP融合タンパク質として細胞内局在を調べたところ、融合タンパク質は頂端分裂細胞特異的に発現し、細胞核に局在した。また、シロイヌナズナAtet21の発現解析を行ったところ、細胞分裂が盛んな組織に発現していた。et21とAter21遺伝子のプロモーター領域にはG2/M期特異的転写を担うMSA配列が認められることから、これらの遺伝子はG2/M期に発現し頂端分裂細胞で機能していると考えられる。遺伝子機能を解析するために、ヒメツリガネゴケ遺伝子破壊系統の作出を行っており、この結果も併せて報告する。