抄録
雌雄異株植物ヒロハノマンテマはXY型の性決定を行い、Y染色体上に雄性決定因子の存在が示唆されている。雌雄異株植物における性決定のモデルとしてサブトラクションを中心に雄性決定因子の探索が行われてきが、現在までにY染色体特異的遺伝子は単離されていない。そこで、BACライブラリーを構築し、Y染色体上の遺伝子を探索することを試みた。Y染色体上の遺伝子を解析するため、Y染色体STSマーカー群を用いてBACライブラリーをスクリーニングした。その結果、Y染色体断片由来の7つのBACクローンを特定した。サザン解析を行い、各クローンに含まれるY染色体特異的配列の比率を検討した。雌雄のゲノムDNAでシグナル強度に明確な差のみられたMS2-9d12Fクローンを選び、物理的断片化とショットガンクローニングによってその塩基配列を決定した。MS2-9d12Fのインサートサイズは120 kbで、100 アミノ酸残基以上のORFを48含んでいた。24のORFはレトロエレメントと相同性を示した。また、蕾での蓄積量が多くnon-coding RNAと考えられるCCLS96.1遺伝子がコードされていた。ORF128とORF191はイネゲノムで報告されているORFに、ORF211はシロイヌナズナで発現が確認されているORFとの相同性を示した。Genomic PCRによってORFのY染色体特異性を、RT-PCRによって発現を確認した。その結果、発現が確認されたORFは全てY染色体以外に、常染色体またはX染色体にコピーを持ち、雌雄の葉と蕾で発現していた。