抄録
AP2/ERFドメインを持つ植物特異的な転写因子であるERFファミリーの包括的かつ体系的な機能解析を目的として、2種のモデル植物について公開されている配列情報を基にin silicoによるERFファミリー遺伝子の同定およびタンパク質構造、分子系統等の解析を行った。シロイヌナズナでは122個の遺伝子が推定された。その多くはERFおよびDREBという2つの主要なサブファミリーに分類され、さらにそれぞれ5つおよび2つのグループに分けられた。これらに属さない12個の遺伝子は3つのグループに分けられた。またAP2/ERFドメイン外にはそれぞれ特異的な転写制御機能を持つと考えられる複数のモチーフが見いだされ、各グループあるいは各サブグループには、特徴的なモチーフが保存されていた。これらの結果および既知のERFファミリー遺伝子の機能情報等から、グループあるいはサブグループごとの機能分化が推定された。さらに、ジャポニカイネのゲノム中にはこれまでのところ115個のERFファミリー遺伝子の存在が推定された。これらはシロイヌナズナとほぼ同様にグループ化され、保存モチーフの多くも同様に存在していた。このことは、ERFファミリーのグループあるいはサブグループごとの機能分化が種を越えて共通している可能性を示唆している。さらに、DNAアレイを用いてシロイヌナズナERFファミリーの発現プロファイルの解析を行った。