抄録
ミヤコグサのゲノム解読に伴ってシロイヌナズナと相同性を示さない遺伝子の存在が明らかにされており、そのようなミヤコグサ遺伝子の解析は、多様な工業原材料植物、農作物の遺伝子解析の基盤となる。本研究では、ミヤコグサ完全長cDNAライブラリー(培養細胞、ならびに、メチルジャスモン酸とサリチル酸を処理した培養細胞に由来)の作製を進めるとともに、5‘末端のシークエンシングの結果から完全長cDNAクローン候補の大規模解析による選抜を行っている。完全長cDNAライブラリーと従来法によるcDNAライブラリーの両者に由来する139,727個のESTを解析した。24,105個のUNIGENE(10,024 singlet含む)から完全長クローンの同定とその機能を推定するため、公開データベース(NCBI nr, TAIR AGI, TIGR LjTC, MtTC)との相同性検索(BLAST、1e-10)およびGO分類を行った。その結果、いずれのデータベースからも相同性がみられないUNIGENEが全体の約4割を占めた。これらの機能未知のUNIGENEは、シロイヌナズナには見い出されないので、植物の遺伝的多様性を解析する上で重要である。推定された完全長配列のドメイン探索の結果、レトロトランスポゾンを制御するgagドメインや脳の神経系に関与するヘパリン結合タンパク質ファミリーなどが認められている。今後は、他のモデル植物との比較ゲノム解析から、ミヤコグサに特異的な遺伝子の絞り込みやその特性解析を行う予定である。