日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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硫黄欠乏条件下で育てたシロイヌナズナにおける種子タンパク質のプロテオーム解析
*東 泰弘平井 優美野路 征昭内藤 哲斉藤 和季
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p. 705

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抄録
種子は次世代の発芽に必要な窒素や硫黄などの栄養素をタンパク質として貯蔵している。硫黄欠乏条件下において植物は、含硫アミノ酸含量の異なる複数のタンパク質の蓄積比を変化させ、窒素源としてのタンパク質蓄積量を保つことが知られている。本研究では、植物種子の硫黄欠乏条件下での環境応答やその制御機構の解明を目的としてシロイヌナズナ種子のプロテオーム解析を行った。
シロイヌナズナの野生型株(Col-0)および遊離メチオニンを過剰に蓄積する mto1変異株を硫黄欠乏条件下および通常条件下で栽培した。完熟種子より抽出したタンパク質を二次元電気泳動で分離し、MALDI-TOFMSにて同定した。主要な種子貯蔵タンパク質の各サブユニットはそれぞれが複数のスポットとして検出され、そのいくつかの蓄積量に変化がみられた。12S種子貯蔵タンパク質の1つであるCRA1のαサブユニットでは硫黄欠乏条件下において蓄積量の減少しているスポットが観察された。各スポットの分子量や等電点の解析などから、通常条件下で、これらの種子貯蔵タンパク質ではC末端の断片化が起こっていることが明らかになった。さらに硫黄欠乏条件下では、この断片化が抑制されることが推定された。この他にも、いくつかのタンパク質について蓄積量の変化が観察された。今回の結果から、種子貯蔵タンパク質は硫黄欠乏条件下において異なる翻訳後切断や修飾を受けていることが示唆された。
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© 2004 日本植物生理学会
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