抄録
Casein kinase 2(CK2)は動物や酵母において転写を調節することが知られており、植物ではシロガラシのプラスチド転写装置の成分としてCK2タイプのキナーゼが質量分析によって示されている。シロイヌナズナにはCK2タイプのキナーゼが複数あり、本研究ではデータベース上のシロイヌナズナゲノム配列を元に、葉緑体に局在すると思われるCK2タイプのキナーゼ(At2g23070)を推定した。At2g23070-GFP融合タンパク質を用いて細胞内局在を調べたところ、葉緑体においてGFPの蛍光を確認することができたことから、このタンパク質をAtcpCK2と名付けた。AtcpCK2を大腸菌を用いて発現、精製し、in vitroで核様体の転写実験を行ったところ、AtcpCK2の添加によって核様体のUTPの取り込み量が減少した。また、AtcpCK2を添加した核様体をDAPIで染色し、蛍光分光光度計による分析を行ったところ、蛍光強度の低下が見られた。さらに、RNAゲルブロット分析により、AtcpCK2の発現が光による誘導を受けないことがわかった。これらのことから、シロイヌナズナの葉緑体に輸送されるCK2タイプのキナーゼであるAtcpCK2は光条件に関わらず発現し、核様体を構造的に変化させることにより転写を抑制する可能性が示唆された。