日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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アブシシン酸生合成阻害剤の開発と植物への効果
*浅見 忠男Sun Young Han北畑 信隆斉藤 臣雄小林 正智篠崎 一雄中野 雄司中島 一雄篠崎 和子吉田 茂男
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p. 740

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抄録
(目的)アブシジン酸の生理機能を明らかにするには、簡便にアブシジン酸欠損状態を作りだすことができるアブシジン酸生合成阻害剤の利用が有効である。今までに知られているアブシジン酸生合成阻害剤としてはフィトエン不飽和化酵素阻害剤が挙げられるが、いずれも植物生育に必須な成分であるカロチノイドの生合成を阻害することから、植物に対するダメ-ジが大きく純粋にアブシジン酸の機能を調べるためには不適当であった。そこで特異的なアブシジン酸生合成阻害剤を得ることを目的として、カロテノイド二重結合開裂型酵素である9-cis-epoxycarotenoid dioxygenaseに着目し、この部位を標的とする阻害剤を開発することにした。この反応はアブシジン酸生合成の鍵段階と考えられており、この反応を制御することによりアブシジン酸生合成の制御が容易に行えると考えた。
(結果)有機化学的に合成した化合物中に特異的にアブシジン酸生合成系を阻害する化合物を見いだすことができた。この化合物はイン・ビトロの系で酵素活性阻害剤として作用するだけでなく、気孔細胞にストレスを与えた場合の閉鎖を阻害し、アブシジン酸を系に添加することにより効果が打ち消された。また、アブシジン酸誘導条件での内生量測定の結果、この化合物を処理した植物は無処理の植物と比較してアブシジン酸含量が減少していた。以上より合成化合物はアブシジン酸生合成阻害剤として機能していると考えた。
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© 2004 日本植物生理学会
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