抄録
タバコ種間雑種(Nictotiana gossei Domin x N. tabacum L.)の培養細胞(GTH4)はその親植物同様37℃から26℃に移した後、急速に致死する。これまでの研究から、活性酸素種がGTH4の細胞死に関与することが示されてきた。GTH4細胞の致死反応において、O2-とH2O2とのいずれが、より直接のシグナルとして作用するかを調査した。細胞をマンガンデスフェリオサミン(MnDef)やSOD処理すると、共にO2-の検出量が低下したが、MnDefではH2O2の検出量も低下した。他方、SODではH2O2は低下しなかった。細胞死はMnDefで抑制されたが、SODでは抑制されなかった。細胞をピリジンやDPI、あるいはカタラーゼ(Cat)処理するとH2O2の検出量は低下し、細胞死も抑制された。グルコース(G)/グルコース酸化酵素(GO)によるH2O2発生条件下では細胞死は促進し、Catを同時処理することで抑制された。キサンチン(X)/キサンチン酸化酵素(XO)によるO2-発生条件下では無処理区と比較して90倍ものO2-とH2O2とが検出されたが、細胞死は抑制された。また、X/XO処理はG/GOによる細胞死促進効果をうち消した。以上の事実から、GTH4細胞の致死発現にはO2-ではなくH2O2がシグナルとして作用することが明らかとなった。