抄録
Chl. tepidumからクロロソームを単離する新しい手法を開発した。 2M NaSCNの存在下でEDTA-リゾチーム処理により外膜を破壊し、浸透圧ショックで溶菌後、ショ糖勾配遠心によりクロロソームの単離を行った。この手法により単離したクロロソームはバクテリオクロロフィル(BChl) aをもつFenna-Mattews-Olson (FMO)タンパクを結合していないことが低温スペクトル(100K)測定により確認された.従来のフレンチプレスによる破砕方法で単離したクロロソーム内ではBChl cからベースプレートBChl aへのエネルギー移動効率は低下するが、この手法により単離したクロロソーム内では生細胞内における効率とほぼ近い結果を得た.このクロロソーム単離の過程でBChl cのQyバンドのピークは約10 nm短波長側へシフトしたが、ポリエチレングリコール(PEG)を加えることで元の生細胞の波長を回復した.これはPEGのもつ疎水性効果によるものと考えられた.またPEGを加えた前後のスペクトル分析からBChl c集合体の波長のシフトは長波長側のみの影響によることから、クロロソーム内のBChl c集団はFMOタンパクの分離に伴って集合構造が変化し、PEGを加えることで元の状態に戻ったことが示唆された.