抄録
好熱性シアノバクテリアの光化学系I反応中心のP700近傍には機能未知のフォスファチヂルグリセロール(PG)が3分子結合し、その機能は興味深い。シアノバクテリア SynechocystisPCC6803 のPG合成酵素欠損株をPG欠乏培地に移すと、既報のように、3日以内に系II電子受容体キノン(QB)機能が失われた。この時点では系I活性には変化なかった。さらに7日以上PG欠乏状態をつづけると、系I反応中心量の減少、3量体形成の阻害、小蛋白質の欠落がみられた。PG再添加により3量体形成の回復、系II活性の回復がみられた。これにより反応中心外側の3量体中心部でPGが働く事が示された。さらに、遅延蛍光の励起スペクトルと、5-77Kでの蛍光寿命を測定し、PG欠乏に伴う系I, II反応中心内部の機能変化について検討した。