抄録
植物細胞でのシグナル伝達の分子機構を解明するためには、タンパク質の核-細胞質間輸送の視点からの考察が有効である。私たちはGFPを利用して核外輸送系の特性を明らかにした。核外輸送には疎水性アミノ酸に富む核外輸送シグナル(NES)が働くとされており、本研究ではPKIαのNES(NES1)とトマトHsfA2のNES(NES2)をそれぞれGFPのN末端、C末端、もしくは両方に付加したプラスミドを構築した。これらをタマネギ表皮細胞で一過的に発現させ、NES-GFP融合タンパク質の細胞内局在を観察した。NES1もNES2もGFPの核外輸送には有効であったが、NES1付加よりもNES2付加の効果の方が大きかった。また、NES付加はN末端、C末端に関わらず有効であった。一方、タンパク質の核外輸送にはエクスポーチンがタンパク質受容体として働く。このエクスポーチンの特異的阻害剤であるレプトマイシンB(LMB)の効果を調べたところ、NES-GFP融合タンパク質の核外輸送が阻害された。このことから、NES-GFP融合タンパク質の核外輸送にはエクスポーチンが関与していることが示された。今後、さまざまなタンパク質の細胞内分布に関する実験に応用できる。