抄録
小胞体で合成されるタンパク質は正しくフォールディングされた後、小胞輸送により目的の場所へ運ばれる。ストレスなどによるフォールディング異常でBiPなどの小胞体シャペロンの遺伝子が誘導される現象は小胞体ストレス応答と呼ばれる。植物においては小胞輸送系に関する遺伝子も誘導される。植物における小胞体ストレス応答の分子機構を明らかにすることが本研究の目的である。酵母、動物の小胞体ストレス応答にbZIP型転写因子が関与することから植物でもbZIP型転写因子が関わるという予想のもとに実験をおこなった。シロイヌナズナのゲノム中に存在する75のbZIP型転写因子遺伝子に関して、小胞体ストレスを誘導する糖鎖合成阻害剤ツニカマイシンにより転写産物の大きさあるいは量が変化するものをRT-PCRにより探索した。その結果、顕著に発現量が増加する遺伝子を同定しAtbZIPERと名付けた。興味深いことにAtbZIPERはC末端側に膜貫通領域と考えられるドメインを有し、N末端側とGFPの融合タンパク質は核に局在したことからタンパク質レベルでの切断が活性化に関与する可能性が示唆された。GUSレポーター遺伝子を用いた組織化学的解析によりAtbZIPERは未熟な種子で発現していると考えられた。またT-DNA挿入による遺伝子破壊株においては、小胞体ストレス応答により誘導される小胞輸送に関わる遺伝子の発現が抑制された。