抄録
バクテリア型リン酸リレー情報伝達機構が高等植物に存在することが明かとなり注目されている。我々は、シロイヌナズナにおけるリン酸リレー情報伝達機構が3つの因子群(AHKs, AHPs, ARRs)から構成され、サイトカイニンなどの植物ホルモン応答に関与することを示唆してきた。しかし、シロイヌナズナにおけるリン酸リレー情報伝達系の機能的ネットワークの全貌は不明である。ARR因子群はアミノ酸配列から大きくタイプAとタイプBに大別されが、ここではタイプBに属するARRに焦点をあてた。タイプ-B ARRは、レシーバードメインに加えDNA結合ドメインを持つことから転写因子として働き、サイトカイニン応答転写制御に関与すると考えられている。しかし、個々の特異的機能は明らかにされていない。そこで、まず11種類全てのタイプ-B ARRプロモーター::GUS融合遺伝子を導入した形質転換体を作製し、タイプ-B ARRの器官特異性および時期特異性など発現傾向の解析を行った。さらに、系統樹から見て比較的系統の遠い4種類のタイプ-B ARR(ARR11, ARR14, ARR20, ARR21)の過剰発現体の作成と解析を行った。また転写因子のターゲット遺伝子の解析を目的とし、ARR21過剰発現体のマイクロアレイ解析を行った。これらの解析結果からタイプ-B ARRの生理的機能およびリン酸リレー情報伝達機構における位置付け、さらにはサイトカイニン応答への関与について報告及び考察する。