抄録
我々は、植物の乾燥ストレス応答機構を解明することを目的として、乾燥応答性転写制御因子であるRD26遺伝子の機能解析を行っている。RD26はNACドメインを含むタンパク質をコードしており、我々はこれまでに、RD26:GFP融合タンパク質の局在観察や酵母を用いた転写活性化実験によって、RD26タンパク質が核移行能を持つ転写制御因子として機能することを明らかにした。また、RD26過剰発現体を用いたマイクロアレイ解析を行い、RD26の下流遺伝子を同定した。本研究では、プロトプラストの一過的発現系を用いて、RD26が下流遺伝子のプロモーターを活性化させることを示し、RD26が植物細胞内でも転写因子として機能することを証明した。また、ストレスホルモンであるアブシジン酸 (ABA) 欠損変異体を用いた解析により、RD26遺伝子の乾燥応答性が主にABAによって制御されていること、さらに、RD26過剰発現体がABAに高感受性を示すことを明らかにした。現在、RD26欠失変異体、RNAiおよびリプレッションドメインを用いたRD26機能欠損変異体を作製し、RD26過剰発現体との表現型比較を行っている。これらの結果と合わせて、RD26がABAを介したストレスシグナル伝達において果たす役割について考察する。