抄録
主要作物の中では一般的にオオムギは耐塩性が高く、イネは感受性である。外観的にも似たこれらイネ科植物間に見られる塩ストレスへの耐性機構の差異に関する知見を得るために、オオムギの塩ストレス応答性遺伝子群を用いたカスタムアレイを作製し、オオムギとイネにおける塩ストレス処理後初期(処理後1時間目と24時間目)における遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、オオムギでは多くの遺伝子の発現量が増加していたがイネでは少数の遺伝子のみが発現誘導されていた。またオオムギでは浸透圧調節に関係した遺伝子群の早い発現制御が見られたのに対し、イネでは見られなかった。一方で、イオンホメオスタシスに関連したいくつかの遺伝子は両種でともに発現誘導が確認された。さらにオオムギではいくつかのアミノ酸合成に関連した遺伝子群の発現誘導が確認されたが、イネでは発現が抑制されていた。このような塩ストレス処理後初期におけるストレス耐性に関与した遺伝子群の発現制御の差異が両種間に見られる塩ストレスへの耐性の差異を示唆していると考えられた。また一部の遺伝子についてリアルタイムPCRやタンパク質レベルでの発現量の差異を確認しており、本研究におけるアレイ解析の有効性が示された。