抄録
タンパク質脱リン酸化酵素タイプ2C(PP2C)は酵母やシロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana)の研究から環境ストレス応答のシグナル伝達に関与していることが示されている。特にシロイヌナズナでは、アブシジン酸シグナル伝達に関与するABI1,ABI2が詳しく研究されている。我々は塩生植物アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)から11個のPP2C(Mpc1~11)を単離し、その中で全長のcDNAが得られたMPC2,6,8遺伝子に関して、シロイヌナズナに遺伝子導入して解析を行っている。MPC2の形質転換ライン3ラインの中で、2ラインは野生型と外見上同じような表現型を示したが、他の1ラインは野生型と比較して成長が遅いこと、種子ができにくいことが分かった。ノーザン解析の結果、野生型と同じ表現型を示したラインではMPC2遺伝子が過剰に発現していたのに対し、表現型の変化していたラインではMPC2のRNAが分解していた。また、MPC2遺伝子と配列相同性の高いシロイヌナズナ内在性遺伝子に関するノーザン解析の結果、表現型の変化していたラインでは分解しているRNAが確認された。以上の結果から、このラインの植物体ではco-suppressionが起こり、シロイヌナズナ内在性のMPC2相同遺伝子の発現が抑制されたために表現型が表れた可能性が考えられた。