抄録
イネの多収を目的とした多窒素条件では,夏期の冷温による不稔が発生しやすい。これまでに多窒素条件では小胞子初期の冷温により花粉数が顕著に減少し,また柱頭上花粉数が充分でも稔実歩合が低いことを示してきた.これらのことは,体内の窒素条件により葯や花粉の冷温感受性が変化することを示唆している.この生理的メカニズムを明らかにするため,葯で発現するタンパク質を二次元電気泳動により網羅的に解析し,多窒素・冷温により変動する蛋白質を探索した.イネプロテオームプロジェクトにより,イネ葯蛋白質の二次元電気泳動像と同定された蛋白質が公開されている.このデータベースと照合した結果,beta-expansinは多窒素により減少し,Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenaseは多窒素・冷温により増加した.