抄録
近年ダイオキシン類の環境汚染が社会問題となってきており、汚染の有効的な除去法として、植物を用いるいわゆるファイトレメディエーションが注目を集めている。そこで本研究では従来からダイオキシン類の生分解についての報告の多い白色腐朽菌の産生するリグニンペルオキシダーゼ(Lip)、マンガンペルオキシダーゼ(Mnp)、ラッカーゼ(Lac)の三種類のリグニン分解酵素群に着目し、これらの遺伝子を導入した組換え植物体を創製しダイオキシン類の生分解性を検討することを目標とした。まず白色腐朽菌のmRNAをテンプレートとしたRT-PCR法でいくつかのcDNA断片を釣ってきた。これらの塩基配列をDNAシークエンサーで解析し、DNAライブラリで検索したところP.chrysosporiumからLiP及びMnP、T.versicolorからLacのmRNAが何れも95%以上の高い相同性で得られた。そこでバクテリオファージラムダと大腸菌ゲノム間の相同組み換え反応を応用した遺伝子クローニングシステム(Gateway Technology/Invitrogen)を用いてLiP、MnPおよび Lac完全長cDNAのクローニングを試みた結果、各酵素cDNAの塩基長に相当するPCRバンドが得られた。 さらにシロイヌナズナ(A. thaliana )ゲノムへのLiP、MnPおよび Lacの各酵素遺伝子の導入を試みた。