抄録
ペルオキシソームは、脂肪酸β酸化、グリオキシル酸回路およびグリコール酸代謝などの代謝系を持ち、脂肪酸分解や光呼吸などの生理機能を担っている。我々は、2,4-dichlorophenoxybutyric acid耐性変異体の解析から、ペルオキシソームの脂肪酸分解に必須な3つの遺伝子(PED1、PED2、PED3)を同定した。
これらのうちPED3遺伝子は、分子量140kDのペルオキシソーム膜タンパク質Ped3pをコードしている。このタンパク質は互いに類似性をもつドメインがタンデムに2つ繰り返された構造をとっており、典型的な"full-size" ABCタンパク質(ATP-binding cassete transporter)としての特徴をもつ。ped3変異体のペルオキシソームは脂質分解能を失っているものの形態異常は認められない。一方、脂肪酸β酸化酵素(3-ketoacyl CoA thiolase)を欠損するped1変異体のペルオキシソームは肥大化し、内部にチューブ状の構造が認められる。ped1/ped3二重変異体を作成したところ、本葉や花序の形態異常を示し、不稔であった。
以上の結果をもとに脂質分解や形態形成に対するPed3pの役割について考察する。