日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第45回日本植物生理学会年会講演要旨集
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分泌性因子による維管束分化の制御機構
*本瀬 宏康杉山 宗隆松林 嘉克出村 拓坂神 洋次福田 裕穂
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p. S023

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抄録
植物の道管・仮道管は、縦に連なった細胞が管状要素と呼ばれる細胞に次々に分化することで形成される。この連続的な細胞分化は、細胞間相互作用によって厳密に制御されていると考えられるが、その制御機構はほとんどわかっていない。我々はヒャクニチソウのin-vitro管状要素分化系を用い、管状要素前駆細胞が分化誘導因子を分泌し、近傍の細胞を管状要素分化経路に引き込むことを示した。この分化誘導因子が新規のアラビノガラクタンタンパク質であることを突き止め、活性に因んでxylogenと名付けた。木部組織におけるxylogenの局在パターンとxylogen変異株の解析から、xylogenは極性をもって分泌され、隣接した細胞の分化を引き起こすことにより、道管・仮道管のパターン構築に寄与することが明らかになった。
 硫酸化ペプチドホルモンphytosulfokineはin-vitro管状要素分化を促進するが、その生理的意義はわかっていなかった。我々の解析により、phytosulfokineが傷害により誘導され、傷害応答を抑制する役割を果たすこと、この傷害応答抑制効果はプロテインキナーゼやエチレン合成の抑制などを介していることが示唆された。Xylogenやphytosulfokineなどが分化を促進する一方で、低分子の分化阻害因子が存在し、全ての細胞が管状要素に分化しないようにバランスを保っていることが示唆されている。以上の結果を総合して、維管束分化を制御する細胞間相互作用について考察する。
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© 2004 日本植物生理学会
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